
高額な医療費に対して活用したいのが、国保や社保の加入者なら受けられる「高額療養費制度」という制度があります。
*
高額療養費制度とは
高額療養費とは、月の始めから終わり(1日から末日)にかかった医療費の自己負担額が高額になってしまった場合、自己負担限度額を超えた分が払い戻されるという制度です。
ひと月の支払額が1つの医療機関において、21000円以上になった場合に適用され、また1つの医療機関であっても外来と入院、医科と歯科は分けて計算されます。
健康保険加入者で年齢50歳、年収450万円の人が手術で入院し、医療費が1か月(1日~月末)の間に総額80万円かかった場合の例です。
健康保険によって80万円の3割が自己負担になるため、24万円の負担が生じます。自己負担限度額は、年齢や年収によって区分が分かれており、年齢が50歳で年収が450万円である人の条件に合った区分は「80100円+(医療費-267000)×1%」という計算式が当てはまるので「80100円+(80000-267000)×1%」=85430円が自己負担限度額になります。
結果、3割の自己負担額240000円から85430円を引いた154570円が払い戻されるということになります。
尚、世帯合算といって1人では高額療養費制度の対象にならない場合、世帯内で何人かが同じ月の中で医療機関を受診した時、また一人の人が複数の医療機関を受診して窓口で別に支払った自己負担額も合算することができますが同じ月の中の支払いであることが条件になります。
高額療養費制度は、ご自身が加入している健康保険や市町村国保、協会けんぽ、共済組合、後期高齢者医療制度など公的な医療保険に対し、高額療養費の支給申請書を提出することで制度が受けられます。
医療保険によっては自動的に高額療養費の支給を振り込んでくれる場合がありますので、ご自分の医療保険窓口で確認しましょう。
※出典引用:厚生労働省保健局PDFより
高額療養費制度の上限額

高額療養費制度の自己負担限度額は、年齢と収入によって計算式が異なり、収入に応じた自己負担限度額の区分は以下の通りです。
【69歳未満の場合】
適用区分 | 収入区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|---|
年収約1160万円~ | 健保:標準報酬月額83万円以上、国保:所得901万円超 | ひと月の上限額(世帯ごと):25万2600円+(医療費-84万2000)×1% |
年収約770万円~1160万円 | 健保:標準報酬月額53~79万円、国保:所得600~901万円 | ひと月の上限額(世帯ごと):16万7400円+(医療費-55万8000)×1% |
年収約370万円~770万円 | 健保:標準報酬月額28~50万円、国保:所得210~600万円 | ひと月の上限額(世帯ごと):8万100円+(医療費-26万7000)×1% |
年収約156万円~370万円 | 健保:標準報酬月額26万円以下、国保:所得210万円以下 | ひと月の上限額(世帯ごと):5万7600円 |
住民税非課税世帯 | ー | ひと月の上限額(世帯ごと):3万5400円 |
【70歳以上の場合】
適用区分 | 収入区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|---|
【現役並み所得者Ⅲ】年収約1160万円~ | 標準報酬月額83万円以上、課税所得690万円超 | ひと月の上限額(世帯ごと):25万2600円+(医療費-84万2000)×1% |
【現役並み所得者Ⅱ】年収約770万円~1160万円 | 標準報酬月額53~79万円、課税所得380~690万円 | ひと月の上限額(世帯ごと):16万7400円+(医療費-55万8000)×1% |
【現役並み所得者Ⅰ】年収約370万円~770万円 | 標準報酬月額28~50万円、課税所得145~380万円 | ひと月の上限額(世帯ごと):80万100円+(医療費-26万7000)×1% |
【一般】年収約156万円~370万円 | 標準報酬月額26万円以下、課税所得145万円未満 | ひと月の上限額(世帯ごと):5万7600円、うち外来(個人)1万8000円(年間14万4000円) |
【住民税非課税世帯】 | Ⅱ住民税非課税世帯 | ひと月の上限額(世帯ごと):2万4600円、うち外来(個人)8000円 |
【住民税非課税世帯】 | Ⅰ住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など) | ひと月の上限額(世帯ごと):15000円、うち外来(個人)8000円 |
高額療養費制度の対象外になるもの
高額療養費制度の対象にならないものは、入院時の差額ベッド代、食事代、先進医療などです。
また、自由診療になる不妊治療や歯科インプラントに関しても制度の対象にはなりませんので注意しましょう。
限度額適応認定証を発行してもらう
入院・手術等で医療費が高額になることが予測できる場合には、限度額適応認定証を加入保険の窓口で発行してもらいましょう。
診察時や入院時に限度額適応認定証を予め提出しておくことで精算時に相殺してくれます。
手術になると数十万~数百万円かかる場合もあり、一時的に負担するのが難しい方はぜひ利用したいところです。
対応していない病院もありますので事前に確認しましょう。
適応期間を理解する【重要です】
高額療養費制度は、高額な医療費に対して一定額以上を差し戻してくれるという大変助かる制度です。
ここで重要になるのが適応期間です。
毎月1日~月末までに1か月間の間にかかった医療費が対象になるため、月をまたいだ入院になると上限額2か月分が必要になります。
例えば、3月15日に入院して手術をし、翌月の4月10日に退院した場合は3月と4月の最低上限額が請求されます。※上限額以上の医療費がかかった場合です。
年収300万円の50歳の方の上限額は57600円になります。3月に57600円+4月57600円の115200円+ベッド代や食事代等が退院時に必要になってきます。
これが3月1日に入院して3月31日に月内で退院することができれば、 57600円+ベッド代や食事代で済むことになります。
緊急を要さない入院であれば、医師に入院時期について相談するのも良いかもしれません。